5/4拍子の革新
『Take Five』は、ジャズの歴史において革新的な楽曲として知られている。その最大の特徴は、通常のジャズが4/4拍子や3/4拍子を基本としているのに対して、5/4拍子を採用している点である。5/4拍子は、5拍を1小節とするリズムパターンであり、通常のジャズとは異なる独特のリズム感を生み出している。この拍子の導入は、ジャズに新たなリズムの可能性を提示し、他のミュージシャンに多大な影響を与えた。
『Take Five』のリズムは、シンプルでありながらも洗練されており、そのリズムパターンはリスナーに強い印象を与える。5/4拍子のリズムは、曲の中で繰り返されるメロディと調和し、聴く者を引き込む魅力を持っている。このリズムの革新は、ジャズの多様性を広げ、新たな表現の道を切り開いたと言える。
デイヴ・ブルーベックとポール・デズモンドの役割
『Take Five』は、デイヴ・ブルーベック・カルテットのメンバーによって作曲され、演奏された。このカルテットは、デイヴ・ブルーベックがリーダーを務め、ポール・デズモンドがアルトサックスを担当していた。ブルーベックは、ピアニストとしてだけでなく、作曲家としても才能を発揮し、ジャズに新しい視点をもたらした。
ポール・デズモンドは、『Take Five』の作曲者として知られており、そのメロディラインは彼の独特なサックスプレイに大きく依存している。デズモンドの演奏は、クールで滑らかであり、曲全体に軽やかさと優雅さを与えている。また、デズモンドとブルーベックのコラボレーションは、ジャズ界において非常に重要なものとなっており、その相乗効果が『Take Five』の成功に大きく寄与している。
初演とその影響
『Take Five』は、1959年にリリースされたアルバム『Time Out』に収録された。このアルバムは、ブルーベック・カルテットが実験的なリズムと拍子を探求するものであり、5/4拍子の『Take Five』はその代表曲となった。リリース当初、この曲は多くのリスナーにとって新鮮であり、その斬新なリズムとキャッチーなメロディは瞬く間に人気を博した。
『Take Five』は、ジャズチャートだけでなく、ポップチャートでも成功を収め、ブルーベック・カルテットの名声を確立することとなった。この曲の成功は、ジャズミュージシャンに新たなリズムの探求を促し、5/4拍子や他の変則的な拍子が取り入れられるきっかけとなった。『Take Five』の影響は、ジャズの枠を超え、他の音楽ジャンルにも広がっている。
代表的なカバーと演奏
『Take Five』は、その独特のリズムとメロディから、多くのミュージシャンによってカバーされている。以下に、いくつかの代表的なカバーとその解釈を紹介する。
アル・ジャロウ
アル・ジャロウは、『Take Five』をボーカルアレンジでカバーし、そのスキャットシンギングと豊かな表現力で曲に新たな命を吹き込んだ。ジャロウのバージョンは、ジャズボーカルの名演として広く認識されている。
ジョージ・ベンソン
ジョージ・ベンソンのギターバージョンも有名である。ベンソンは、ギターを使ってオリジナルのサックスのメロディを再現し、独自の即興演奏を加えている。彼の演奏は、ブルーベック・カルテットのオリジナルに対する敬意を示しつつも、ベンソンならではの個性を強く打ち出している。
デイヴ・ブルーベック・カルテットのライブバージョン
ブルーベック・カルテット自身も、『Take Five』をライブで何度も演奏しており、その都度異なる即興演奏が楽しめる。特に、ドラマーのジョー・モレロのソロは、毎回異なる展開を見せ、リスナーに驚きと感動を与えている。
まとめ
『Take Five』は、デイヴ・ブルーベック・カルテットによって生み出された、ジャズの歴史における革新的な楽曲である。5/4拍子の導入は、ジャズに新たなリズムの可能性をもたらし、多くのミュージシャンに影響を与えた。デイヴ・ブルーベックとポール・デズモンドのコラボレーションによって生まれたこの曲は、初演以来、ジャズのスタンダードナンバーとして不動の地位を築いている。数多くのカバーと演奏が存在し、その多様な解釈が『Take Five』の魅力をさらに広げている。これからも『Take Five』は、ジャズのリズム革命を象徴する楽曲として、多くの人々に愛され続けるだろう。
